どうも、おっちょ(@occho_fxtrader)です。
「今週の株式市場は、SQによる動きに警戒」などという相場展望やヘッドラインを目にしたことがあるかと思います。
後述しますが、SQは株価に大きな影響を与え、ひいてはその影響は為替市場にも及びます。
トレーダーの方々であれば知っておいて損はないどころか、むしろ知っておくべきとも言える事柄ですので、是非とも押さえておきたい内容です。
本記事では、そんな「SQ」について、初心者にも分かりやすいように解説していきますので、よろしければ最後までご覧ください。
SQ(特別清算指数)とは
先物・オプション取引には、株やFXにはない限月(読み:げんげつ)という取引ルールがあります。
これは簡単にいうと、「取引の期限」のことです。
そもそも先物取引は、将来の一定の期日に受け渡しを行うという約束のもと、その価格を今決めてしまおうという取引ですので、原則的には必ず期日(期限)があります。
ですので、先物取引では期日前に反対売買をするか、期日に受渡しをするか、いずれかの方法で期日までに必ず決済を行わなければならないのですが、様々な理由からこの日に決済を行わない投資家がいます。
とはいえ、決済期日が決められているので、未決済のまま期日後にポジションを持ち越すことはできません。
そこで用いられるのが、SQです。
SQとは、Special Quotationの頭文字を取ったもので、日本語では「特別清算指数」と言われます。
取引最終日である決済期日までに手動で決済されなかったポジションは、このSQ(SQ値)に基づいて自動的に決済される仕組みとなっています。
SQ値の決まり方
SQ値は、毎月第2金曜日に、日経225構成銘柄の始値を基に算出されます。
なのでSQ値は、その日の日経平均の始値とほぼ同じ価格になりますが、厳密には違います。
日経平均株価の始値は、9時00分05秒の時点で日経225構成銘柄の始値を元に算出されます。(すべての銘柄がこの時点までに寄り付かなかった場合は気配値等を用いて算出されます。)
対して「SQ値」は、日経225構成銘柄がすべて寄り付いた後に算出されます。
言い換えると、全ての銘柄が寄り付くまではSQ値は確定しません。
なので必ずしも前場の開始直後に確定するとは限らず、場合によっては後場に確定する可能性もあるということです。
2021年・2022年のSQ値
参考までに、2021年と2022年のSQ値を以下に載せておきます。
2021年
1月限 | 2月限 | 3月限 | 4月限 | 5月限 | 6月限 |
27,774円95銭 | 29,718円77銭 | 29,282円41銭 | 29,909円73銭 | 27,748円22銭 | 29,046円40銭 |
7月限 | 8月限 | 9月限 | 10月限 | 11月限 | 12月限 |
27,726円72銭 | 28,093円15銭 | 30,085円93銭 | 28,098円14銭 | 29,388円47銭 | 28,523円30銭 |
2022年
1月限 | 2月限 | 3月限 | 4月限 | 5月限 | 6月限 |
28,266円57銭 | 27,835円60銭 | 25,457円94銭 | 27,122円37銭 | 25,951円24銭 | 6月10日に決定 |
7月限 | 8月限 | 9月限 | 10月限 | 11月限 | 12月限 |
7月8日に決定 | 8月12日に決定 | 9月9日に決定 | 10月14日に決定 | 11月11日に決定 | 12月9日に決定 |
4つの「SQ日」
上述した通り、SQ値は、各限月の取引最終日の翌日である「各限月の第2金曜日」に算出されます。
そして、その日をSQ日(SQ算出日)と言います。
先物・オプション取引にはすべて決済期日がありますが、その時期はそれぞれ違い、マーケットでの注目度もそれぞれ異なります。
先物のSQ
先物取引の限月は、3月・6月・9月・12月の年4回あります。
そのため、3月・6月・9月・12月の第2金曜日がSQ日となります。
オプションのSQ
オプション取引は、毎月限月があります。
そのため、毎月第2金曜日がSQ日となります。
メジャーSQ
先物のSQとオプションのSQが重なるSQ日のことを、メジャーSQと言います。
上述したように、オプションのSQは毎月あるので、先物のSQの3月・6月・9月・12月の第2金曜日がメジャーSQとなります。
3月・6月・9月・12月は、先物とオプションの両方の決済が絡むため取引量が増加しやすく、市場に与える影響が大きくなりやすい傾向にあります。
よって、メジャーSQはマーケットでの注目度が極めて高いです。
マイナーSQ
オプションのSQのうち、メジャーSQである3月・6月・9月・12月を除いた、1月・2月・4月・5月・7月・8月・10月・11月のSQ日のことを「マイナーSQ(又はミニSQ)」と言います。
メジャーSQと比較すると出来高は低いので、マーケットではそこまで注目されません。
SQ週に株価が乱高下する理由
さて、ここからが本題です。
「SQ週は相場が荒れる」と言われており、実際そうなることが多いのですが、これには以下の理由が考えられます。
裁定取引の解消によるもの
裁定取引(アービトラージ)とは、同じような値動きをする2つの銘柄を対象に、需給のバランスが崩れ値動きの歪み(価格差)が生じた時に、「割安な方を買い、割高な方を売り」という注文を出し、価格差がなくなった時に決済して利益を狙う取引です。
例として、日経平均先物と日経平均現物を考えてみましょう。
この2つは本来同じ値動きをするはずなのですが、日経平均先物はその時々の需給で価格が決まるため、現物との価格に乖離が生まれることがあります。
この時、先物の価格が高くて現物の価格が安ければ、先物を売って現物を買うというのを同時にやることで、「2つの価格差はいずれ収束する」という性質を利用し利益を出すことができます。
しかし、先物には期日(SQ日)があるのでどこかのタイミングで反対売買を行い、裁定取引を解消する必要があります。
ここからが重要なポイントなのですが、SQ日にはこの裁定取引の解消に伴う大口の売りや買いが出ることがあり、日経平均構成銘柄に異常な価格が付くことがあります。
これは、日経平均株価は「値がさ株(株価が高い銘柄)」の影響で大きく動く傾向があるからです。
日経平均株価は時価総額ではなく225銘柄の株価を合計して平均を出すので、株価が高い値がさ株の影響を大きく受けてしまいます。
特にファーストリテイリング、ソフトバンクグループ、ファナックの3銘柄はみなし株価が高く、日経平均株価に与える影響が大きいことで有名です。
この3銘柄だけで構成比が20%もあり、こういった一部の構成銘柄の価格が動くだけでSQ値が大きく動いてしまいます。
このため、SQ当日の日経平均構成上位銘柄には様々な思惑をもった売買が出やすくなります。
よって、SQ当日の寄り付きは、裁定取引解消のための売買と、それに関わる思惑売買で波乱が起こりやすく、その日が値動きが荒れやすいという傾向があります。
これに加え、先回り取引があれば、SQ日の数日前も値動きが荒くなることも考えられます。
オプション取引のヘッジによるもの
例えばオプションの売り手は、その満期が近づいてくると自分の売り建てているオプションがアウトオブザマネーで終わってくれるかどうかに注視し始めます。
オプションの売り手側は、権利行使価格付近に相場が近づいてきたら、それ以上の損失を回避するために、先物を利用してリスクヘッジを行うのが通常です。
つまり、コールオプションを売っていた人は、相場が上がれば先物を買い、プットオプションを売っていた人は、相場が下がれば先物を売る、という行動(リスクヘッジ)をとります。
このようなリスクヘッジの行動をとることで、さらに相場の流れを助長させることになるというわけです。
SQ週の水曜日は相場が荒れる?
先物やオプション取引の最終売買日は、その限月の該当する月の第2金曜日(SQ日)の前営業日、つまり第2木曜日です。
この日までに手動で決済しなければ、翌日のSQで自動で決済されることになります。
このため、先物・オプションの最終売買日である第2週木曜日またはその前日の第2週水曜日は、様々な思惑が働きやすくなり相場が荒れる傾向にあります。
ここで、SQが実際に相場に影響を及ぼしたであろうことがわかるチャートがありますので見てみましょう。
2020年9月限メジャーSQ
2020年9月11日は、先物とオプションのSQが重なるメジャーSQでした。
その最終売買日である9月10日の前日、9月9日には大きく下落しその後大きく戻しています。
サポートされる水準であっとことも大きく動いた要因と考えられますが、SQによる思惑も相当働いた結果の値動きでしょう。
2020年6月限メジャーSQ
2020年6月12日は、先物とオプションのSQが重なるメジャーSQでした。
6月8日に高値をつけた後、メジャーSQに向けてかなり大きく値を下げました。
コロナショック前にできた高値圏のネックラインに到達したことでの達成感による売りが多く入ったことと合間って、大きく動いたと考えられます。
まとめ
SQ週、特に第2水曜日と第2木曜日は様々な思惑による取引が活発になることは上の説明の通りです。
SQは先物やオプション取引をする人だけが理解しておけばいいと思いがちですが、株式相場は為替相場相関性がありますので、FXや仮想通貨をやられている方も知っておいて損はありません。
情報を制するものは相場を制します。
ぜひ、SQの特徴を理解し、取引に活かしていきましょう。
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